小西文具店

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家の近くに小さな文房具屋さんがありました。名前を小西文具店といいます。私の名字とおんなじ名前。小学生の頃はよく、「小西文具」ってあだなを付けられ、それが嫌で泣いたことを思い出します。小さい頃は、ちょっとしたことですぐに泣いていました。コニシキって呼ばれるのも嫌でしたね(もちろん即泣きでした)。 残念ながら小西文具店は2002年に閉店してしまいます。私は「小西文具」と呼ばれることは嫌でしたが、文房具が大好きだったのでよくその店に通っていました。そしてちまちまと匂い付き消しゴムとか4Hの鉛筆などの文房具を買っていたわけです。



小西文具店のおっちゃんはなんだかちょっと変わっていました。当時、コンパスといえば小さな鉛筆がくっついているタイプのものが主流だったのですが、小西文具店にはシャープペンシル型の最新式コンパスが売っていました。小学生の私がこれを買おうとすると、おっちゃんは「子どもにはまだ早い」と言って売ってくれません。結局あきらめて鉛筆の方を買いました。4Hの鉛筆を買う時も「製図用やで」(子どもにはまだ早いの意)とかなんとか言いながら、しぶしぶです。お菓子を食べながら行くと怒られましたし、冷房中に入り口が少しでも開いていたりすると注意されました。今思うと当たり前のことなのに、当時はうるさいおっちゃんだと思ってました(反省)。 小西文具店では商品をいくらか買うと「にこにこシール」というのを一枚くれました。台紙に貼ってそれがいっぱいになると、150円の金券として使えたのです。全然にこにこしていないおっちゃんの「にこにこシール」、今思うとなんだか可笑しいです。



おんなじ名字で家も近いので、うちに来るはずの郵便物が間違って小西文具店に届くということが何回かあり(逆パターンは何故かない)、その度ごとにうちに届けに来てくださいました。顔も名前も住所も知られていました。もう社会人になってからのある日、小西文具店のおばさんが突然、私の家にやってきました。私が現像に出していた写真を持って(小西文具店は写真の取次ぎもやっていたのです)。 小西文具店のおっちゃんが病気で入院することになり、もうすぐ閉店するので届けに来た、ということでした。閉店セールをしていたので行ってみると、おっちゃんの代わりにおばさんがお店に立ち、店内は商品が減りがらんとした様子でした。私は社会人になっているにもかかわらず、ちまちまと少しだけ文房具を買いました。こういう時でも文房具の大量買いってなかなかできないものです。お店にあるホワイトボードには小さい子どもの字で「おっちゃんはやく元気になってね 小西ぶんぐをまもる会」という落書きがありました。残念ながら2004年現在も小西文具店は閉店したままです。



今でも文房具は大好きです。買わずに眺めるのも好きです。私の文房具好きもはや20年、すべてのはじまりは小西文具店からでした。