本を治すお仕事

 壊れた本を治す仕事がしたい

今でもそう考えるときがあります。



 以前、絵画と古文書を修復している工房で

少しの間お手伝いをさせていただいたことがありました。

古文書に空いた虫食い穴を補修するのが

私の主な仕事でした。



 そこで教えていただいたことは、たくさんあります。

刃物の研ぎ方、刷毛の持ち方、使い方、

紙の繊維(楮・三椏・雁皮)について、裏打ちの方法などなど。

最近、そこで身につけた技術を徐々に忘れていっている事に

気づきました。忘れたくない事なので、なるべく思い返して

忘れないように気をつけています。



 技術以上にそこで働く人たちのことをよく思い出します。

特に50代の技師の方々が素敵でした。本をとてもたくさん

読んでいらっしゃって、色んなことに詳しいのです。

単に年を重ねただけでは、あんなふうにはなれないと

思います。いくつになっても興味を失わず、勉強する姿勢。

見習って素敵に年を重ねられたらいいなと思います。



 きちんと修復された古文書は100年はもつと言われています。

本は人より長生きできるのです。

毎日たくさんの本が生まれて、自分より早く消えていくのを見ると

悲しい気持ちになります。内容に生命力のある本が生まれ、

壊れても修理され、自分よりも長生きしてほしいと思います。