三日月の夜の銀月
三日月の浮ぶ夜
三角屋根のアパートメント
住人たちと招かれたものの集い
密かに紛れ込んだ招かれぬ我々
編集者の部屋をのぞき
白い壁とカーテンに実らぬ憧れを募らせた
カメラマンの部屋では
完結していない作品を手に取り
遠くの海と地平線を目の当たりにした
望遠鏡で月を観察している人たちを
横目でちらちら観察した(仲間には入れずじまい)
彼らは月が傾いて見えなくなっても
ずっと望遠鏡のそばで月のことを考えつづけた
突如現れたカフェは
コーヒーの香りをほのかに残し
また突如姿を消した
我々は「おじゃましました」と外に出て
すぐさま「ただいま」と言って戻りたい衝動にかられながらも
楽しげな声とおれんじの光の引力を振り切り
冷たい暗闇へと歩き出した
現実感のない 三日月のある夜